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MI・YO・TAに涙する-武満徹

私の中でいまだ切ない思いと共に武満徹はある

MI・YO・TAに涙する-武満徹_f0040685_123889.jpg芸術新潮5月号で武満徹の特集を組んでいた
 『はじめての武満徹』
現代作曲家-武満徹 では有るけれど数々の映画音楽を手がけ 多くの著作を残し 時には現代芸術という大きな括りの中で活動をしてきた
武満徹本人のイメージは優しくて穏やかで決して気難しくも近寄りがたくも無く その音楽も難解な物ばかりではないと頭では分かっているのだが どうしても武満の音楽を敬遠してしまっていた 
彼の代表作はまともに聴いた事が無い
紙上で武満を聴き 見 歌い 食べる
とても網羅できそうもない膨大な彼の業績をいくつかの視点から上手に掬い取り分かり易く紹介してある 《ピアニストのためのコロナ》の図形楽譜など 五線譜音楽の世界にいるものにとってはやはり難解と言って良いはずなのだが それも含め紙面から感じるのはその美しさと優しさだった 愛に溢れていると言っても良い 他を拒絶するような要素は何も無い
思い直して手元にある数枚の武満作品のCDの中から『武満徹 ギター作品集成』を聴いてみた  




MI・YO・TAに涙する-武満徹_f0040685_1542094.jpgクレーの絵『余白に』にインスパイアされ作曲された《すべては薄明のなかで》やバッハの《マタイ受難曲》のモチーフを引用した《フォリオス》 そしてポピュラーをアレンジした《ギターのための12の歌》など素晴らしいものばかりだ なかでも《不良少年》が良い 彼がもっとも愛した楽器だけあってまるでギターを弾くときに身体の中に抱え込むような内包的な慈しみと同時に夜の宇宙のような澄んだ広がりを感じる もしこれからちょっと武満を聴いてみようかと思う方にはいいかもしれない 

特集の最後のページをめくるとメロディの一節が記された手書きの楽譜 
何の曲だろうと頭の中で歌おうとしてすぐに涙してしまった それは1996年2月29日武満さんの告別式の日の黛敏郎氏による弔辞の最後の1枚

「それは或るメロドラマ映画の悲恋のシーンにつけられたBG音楽なのですが、余りに素晴らしいので映画に使うのが勿体無くて、ひそかに私が使わずにとっておいたものです。私はあらゆる音楽を通じてこれほど哀しい音楽を知りません。いうならば哀しみの表現の極致と云えるでしょう。貴方と私しか知らないこのメロディを、いま霊前に捧げて、私たちの若き日の共通の想い出を偲び、ご冥福を祈らせてください」(黛氏の弔辞より) 

私がこの曲に出会ったのは数年前 
軽井沢に向かう車の窓から一瞬見えた「武満徹展」の文字
見間違いかと戻ってみたら確かに「武満徹 御代田の森の中で」と題する看板が有った 御代田は武満さんの山荘が有る馴染みの深い場所だ 小さな展示だったが私にはとても興味深かった そこでずっと流していたのがこの曲だった 黛氏が手元に置いておいたメロディに武満さんがもっとも親しくしていた詩人谷川俊太郎が詩をつけた タイトルは『MI・YO・TA』
メロディを口ずさむだけで琴線に触れる 石川セリのやわらかでそこはかとなく漂うような歌声が一層この美しさと哀しさを際立たせている

大分武満徹という存在が怖くなくなってきたような気がする
でも私にとって武満は思い入れのある特別な存在で まだ等分冷静に聴けそうもないと今回分かった 後何年かしたら落ち着いて聴ける日が来るかもしれない。。。

いつも拝見させていただいているClala Flalaさんのブログ芸術新潮の武満特集がうれしくて、不良少年に涙するにTBさせて頂きました



by muha_pi | 2006-05-04 01:50 | Musik-音楽

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by muha_pi
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